『賃金の支払い』
賃金は、通貨で、全額を、毎月1回以上、一定の期日を定めて、労働者に直接支払わなければなりません。賃金から税金、社会保険料等法令で定められているもの以外を控除する場合には、労使協定が必要になります。
なお、一定の条件(・労働者の同意を得ること、・労働者が指定する本人名義の預貯金口座に振り込まれること、・賃金の全額が所定の支払日に払い出し得ること等)を満たせば、金融機関や認定を受けた資金移動業者への振込みにより支払うことができます。
退職手当については、労働者の同意を条件に通貨支払いや金融機関への振込みのほか、・銀行振出小切手、・銀行支払保証小切手、・郵便為替、・デジタル払いにより支払うことができます。
(1)賃金支払いの5原則
・通貨で
・全額を
・毎月1回以上
・一定期日に
・直接労働者に支払うこと
(2)例外
1. 通貨以外のものの支払いが認められている場合
たとえば、・法令や労働協約に定めがある場合、・デジタル払いの労使協定を締結し、労働者が同
意した場合
2. 賃金控除が認められる場合
たとえば、・法令(税金、社会保険料等)、労使協定による場合
3. 毎月1回以上、一定期日払いでなくてよい場合
たとえば、臨時支給の賃金、賞与、査定期間が1か月を超える場合の精勤手当や能率手当など
(3)賃金控除が認められる場合と「相殺」の禁止
賃金については、全額払いの原則から、控除して支払うことは禁止されていますが、次の場合には、賃金から控除して支払うことができます。
1. 所得税、住民税や社会保険料の本人負担分控除など法令に別段の定めがある場合
2. 労使によって「賃金控除に関する協定」が結ばれた場合(賃金控除に関する協定は、届出の必要はありません。)
また、労働者への貸付金を退職時の賃金と相殺したり、労働者の過失等による機器の破損料等の各種の損害額を、一方的に賃金や退職金から相殺したためにトラブルとなるケースが多くなっていますが、当該損害額をすべて労働者に負担させることの是非は別として、賃金等これらを控除することは、基本的にはできないこととなっています。
令和7年7月
社会保険労務士 佐藤正典
次回の記事掲載は、今回のつづき『賃金2』を令和7年8月1日頃に予定しておりますので是非ご覧になって下さい。
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