『年次有給休暇』
年次有給休暇とは、給与を保証された休暇のことで、憲法27条により導かれる「休息権」に基づく制度であり、心身の疲労を回復させ、労働力の維持培養を図るためのものです。
会社は、(1)6ヶ月間継続勤務していること、(2)その間の全労働日の8割以上出勤していることの二つを満たす従業員に10日、以後継続勤務期間が1年経過するごとに、11~20日の年次有給休暇を付与しなければなりません。
また、付与した年次有給休暇は、原則として従業員が希望する時季に取得させなければなりません。ただし、従業員が希望する時季に年次有給休暇を取得すると、事業の正常な運営を妨げる場合は、取得日を変更できます。なお、従業員が年次有給休暇の取得時季を特定する権利を「時季指定権」、これに対し、会社が年次有給休暇の取得時季を変更する権利を「時季変更権」といいます。
『時季変更権の行使が認められる場合』
時季変更権の行使が認められるか否か、つまり事業の正常な運営を妨げるか否かは、事業の規模、内容、職務内容、職務の繁閑、代替勤務者確保の難易などを考慮して判断されます。また、従業員が指定した時季に年次有給休暇を取得できるように行うべき「状況に応じた配慮」の有無・内容も考慮されます。
更に、時季変更権は年次有給休暇の取得そのものを拒否する権利ではなく、他の日に取得することを前提とするものなので、恒常的な要員不足で、常時代替要員の確保が困難な場合は行使できません。
『不当に遅れた時季変更権の行使は無効となることもある』
時季変更権は、事業の正常な運営を妨げる事由の存否を判断するのに必要な合理的期間内に行使しなければなりません。不当に遅れて行われた時季変更権の行使は、信義則違反または権利乱用により無効となることもあります。
一般的には、従業員が時間的余裕をもって時季指定したのに、直前になって時季変更権を行使することは、特段の事情がない限り制限されると考えられます。年次有給休暇の取得を前提とした人員体制を整えるとともに、従業員からの時季指定に対して、遅滞なく年次有給休暇取得の可否等を検討することが重要になります。
令和7年2月
社会保険労務士 佐藤正典
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