『休憩時間について』
「休憩時間」とは、労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間のことです。会社は、労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければなりません。
休憩時間は、原則として一斉に与えなければなりません。ただし、交代勤務が採用されている場合などは、労使協定を締結することにより交代で与えることができます。また、金融・広告業、商業などの一部の業種では、一斉に与えなくても良いことになっています。
なお、休憩時間は、労働者が自由に利用できるものでなければなりません。もっとも、職場の規律上必要な制限を加えることは、休憩時間の目的を損なわない限り認められます。例えば、社内で自由に休息できる場合は、休憩時間中の外出を許可制にすることも可能とされています。
『食事を取っていても休憩時間に該当しないことも』
休憩時間の該当性の有無は、就業規則の定めなどにより形式的に判断するのではなく、就業実態に照らして実質的に判断します。この点、業務に従事していない時間であっても、必要があれば直ちに業務に就けるように待機している時間のことを「手待時間」といいますが、手待時間は労働からの解放が保障された時間とはいえないため、休憩時間ではなく、労働時間に該当することとなります。
例えば、昼休み中でも電話や来客があった場合に対応することが要求されているときは、仮に電話や来客がなかったとしても、その時間は休憩時間ではなく労働時間に該当します。
また、明確な要求がなくても、休憩時間の該当性が否定されることがあります。ホテルの客室清掃などを担当する労働者が状況に応じて業務に取りかからなければならない可能性がある状態に置かれ、常に控室に在室することを余儀なくされていた事案では、労働契約上は45分間の休憩時間が定められていましたが、実際に昼食を取っていた時間も含めて、所定就業時間内は、全て労働時間に該当すると判断されました。
『会社は労働者に休憩時間を確保するように指導する責務がある』
前述のように、明確な要求がなくても休憩時間の該当性が否定される事案があることを踏まえると、会社は、休憩時間が確実に取得されるように配慮する必要があります。
飲食店の店長が、慢性的な人員不足により休憩時間を取得できなかったとして残業代の支払いを求めた事案では、労働者の主張の一部は否定されたものの、会社が、労働者に所定の休憩時間を確保するように指導等を行った形跡がないことも指摘され、未払の残業代の支払いが命ぜられています。
また、休憩時間を取得できなかったことにより、残業禁止命令に違反することになったとしても、そもそも他の労働者からも遵守されていない状況の下で、会社がこれを理由に残業代の支払いを拒むことはできません。
労働から解放される状況をつくり、実質的に休憩時間を取得できるように取り組むことが求められます。
令和6年12月
社会保険労務士 佐藤正典
次回の記事掲載は、令和7年1月27日頃を予定しておりますので是非ご覧になって下さい。
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(佐藤社会保険労務士事務所 佐藤正典・スタッフ一同)